構図も光も理想どおりなのに、手の指だけ崩れている。背景に謎の文字が入っている。そんな「惜しい一枚」を、また最初から生成し直していませんか?
全体の再生成をくり返す、いわゆるガチャ回しは、時間がかかるうえに、気に入っていた構図や表情まで一緒に失うことがあります。
今日は、崩れた部分だけをピンポイントで描き直す「インペインティング(部分再生成)」の基本を、手順・テンプレ・設定の目安つきで解説します。
惜しい一枚は部分再生成で直す
インペインティングは、画像の直したい箇所だけをブラシで塗って(マスクして)、そこだけAIに描き直させる機能です。多くの画像生成ツールに「部分修正」「Inpaint」「生成塗りつぶし」などの名前で搭載されています。
使いどころは大きく2つあります。1つは「崩れの修正」(手の指、顔、破綻した小物)。もう1つは「要素の除去・置き換え」(背景の通行人を消す、看板の文字を消す、机の上の小物を差し替える)です。
どちらも共通するのは、画像全体には手を付けず、問題の箇所だけを直すという考え方です。
なぜ部分再生成が効くのか
理由は3つあります。
1つ目は「当たりの部分を守れる」ことです。全体を再生成すると、同じプロンプトでも構図・光・表情は毎回変わります。せっかくの当たり要素を手放さずに済むのは、部分再生成だけです。
2つ目は「周囲に馴染む」ことです。インペインティングはマスクの外側を文脈として参照しながら描くため、光の方向・色温度・質感が周囲と揃った状態で合成されます。手作業の切り貼りで起きがちな「そこだけ浮く」問題が起きにくい仕組みです。
3つ目は「修正を積み上げられる」ことです。1回で完成させる必要はありません。手→背景の文字→小物、と1箇所ずつ反復して直せるので、修正のたびに画像は確実に良くなっていきます。
部分再生成の手順
直す箇所を1回に1つ決める
欲張って複数箇所を同時にマスクすると、AIがどこに何を描くべきか曖昧になり、仕上がりが不安定になります。「今回は右手だけ」のように1箇所ずつ進めてください。
マスクは少し広めに塗り、境界をぼかす
マスクは対象ぴったりではなく、周囲の背景を5〜10ピクセルほど含めて塗るのがコツです。さらにエッジのぼかし(フェザー)を2〜5ピクセルかけると、生成部分と元画像の境界が自然に溶け込みます。
境界に固い切れ目(シーム)が出る失敗のほとんどは、マスクが狭すぎるか、ぼかしが足りないことが原因です。
プロンプトはマスク内に描くものだけを短く書く
ここがいちばん間違えやすいポイントです。部分再生成のプロンプトには、画像全体の説明ではなく「マスクの中に描いてほしいもの」だけを書きます。
手を直すなら「a natural relaxed hand with five fingers」のように短く具体的に。「カフェで微笑む女性が…」と全体を書き直すと、周囲の文脈と指示が衝突して崩れやすくなります。
変化の強さは0.5から調整する
多くのツールにある「変化の強さ(denoising strength)」は0.5を基準にしてください。0.3前後なら元の形を保った軽い補正、0.8前後なら大きな置き換えになります。まず0.5で試し、物足りなければ上げる、変わりすぎたら下げる、が基本です。
大きな物の除去は半分ずつ進める
画面の広い範囲を占める物を一度に消そうとすると、埋める面積が大きすぎて不自然になりがちです。左半分を消して馴染ませてから、その結果を文脈に右半分を消す。この2段階に分けると仕上がりが安定します。
手の修正を例にした比較
崩れた手のポートレートを直す場合、全体再生成と部分再生成では結果がこう変わります(あくまで例示です)。
| 項目 | 全体を再生成 | 部分再生成(インペインティング) |
|---|---|---|
| 気に入った構図・表情 | 毎回変わってしまう | そのまま残る |
| 直したい手 | 直る保証がない(また崩れることも) | マスク内だけ描き直される |
| プロンプト | 全体の説明を書き直す | 「a natural relaxed hand with five fingers」だけ |
| かかる回数 | 当たりが出るまで数回〜数十回 | 1〜3回程度で収束しやすい |
コピペですぐ使える部分描き直しテンプレ
あなたはレタッチ専門のフォトエディターです。添付画像の指定箇所だけを違和感なく描き直してください。
#直す箇所(マスクする範囲)
〔例:右手/背景の看板の文字/テーブルの上の空き缶〕
#マスク内に描きたいもの(ここだけを短く・具体的に)
〔例:a natural relaxed hand with five fingers/clean plain wall/empty wooden table〕
#守ること
- マスクの外側(構図・人物・光・色味)は一切変えない
- 周囲の光の方向・色温度・質感に合わせて馴染ませる
- 変化の強さは0.5から。物足りなければ0.7に上げて再試行
#NG
blurry, mismatched lighting, visible seams, extra fingers, distorted anatomy, text, watermark
#仕上げ
境界に切り貼り感が出たら「マスクを少し広げて、境界をぼかしてもう一度」と再生成してください。
使い方は4ステップです。
- 元画像を用意し、直す箇所を1つ決める
- テンプレの〔〕を自分の内容に置き換える
- ツールのマスク(ブラシ)で対象より少し広めに塗って実行する
- 結果を見て、変化の強さやマスクの幅を1つずつ調整する
用途別の設定早見表
| 用途 | 変化の強さの目安 | マスクの塗り方 |
|---|---|---|
| 色・質感の軽い補正 | 0.3前後 | 対象ぴったり |
| 手・顔など形の修正 | 0.5前後 | 少し広め+境界ぼかし |
| 物の除去・置き換え | 0.7〜0.8 | 背景を含めて広め |
| 広範囲の除去 | 0.7〜0.8 | 半分ずつ2回に分ける |
修正前チェックリスト
- 直す箇所は1回に1つに絞ったか
- マスクは背景を5〜10ピクセル含めて塗ったか
- 境界のぼかし(フェザー)をかけたか
- プロンプトはマスク内の内容だけになっているか
- 変化の強さは0.5から始めたか
実務注意
編集した画像の扱いは、元画像の権利に従います。他人が撮影・生成した画像を無断で編集して公開するのは避けてください。
実在人物の顔や体の改変は、肖像権・パブリシティ権のリスクがあるため、本人の許可がない限り行わないのが安全です。
EC・広告の商品写真では、商品本体(形・色・ロゴ・ラベル)にマスクをかけないでください。実物と違う商品画像は誇大表現になり得ます。直してよいのは背景や写り込みなど、商品以外の部分です。
無料ツールは解像度や実行回数に制限があることが多いため、試作は無料版で、納品物や入稿データは有料版で、と使い分けるのが現実的です。
画像づくりから修正までを1つの場所で
わたしたちが運営しているilluminAI(イルミンエーアイ)は、日本語で使える画像生成・動画生成のプラットフォームです。
画像の生成だけでなくAI画像編集の機能があり、生成から修正、さらに動画化までワンストップで進められます。生成物は商用利用でき、無料プランは毎月20クレジット・クレジットカード登録不要で試せます(最新の機能・料金は公式 https://illumin-ai.io をご確認ください)。
惜しい一枚を捨てるのは、今日で終わりにしましょう。まずは崩れた手の1箇所から、部分再生成をお試しください!
